Case2 クリーン試験設備

Q:ここではどんなことをしていますか?
A:浮遊微生物に対する評価試験を行っています。
北里環境科学センターは、環境に関わるような分析や試験評価をしています。この研究所ができた1970年代は、水質汚染が非常に問題になった時期でした。そのような背景から、設立当初の目的は、水や大気などの公害に関わる分析をすることでした。現在でも分析としては水がメインですが、近年、それ以外に一般の企業から依頼を受けて、第三者機関としてさまざまな形の評価試験を実施する業務が非常に増えてきています。
中でも浮遊微生物に対する評価は、他ではなかなか手掛けるところがなく、特殊性のある業務として、長く実施してきています。昨今、大空間の中での評価が非常に求められるようになり、「その装置が必要だ」ということでアメニティ・テクノロジーさんにお願いして、このクリーン試験設備をつくっていただきました。
アメニティ・テクノロジーさんには、医薬品や医療品の無菌試験を実施するクリーンルームを始め、防衛省から感謝状をいただいた生物防護性能評価に関わる試験装置もつくっていただきました。
Q:どうしてアメニティ・テクノロジーに依頼を?
A:統一基準で評価する第三者機関が必要でした。
この装置は、非常に清浄度の高い空間中に、まさに細菌やカビ、ウイルスなどの微生物を浮遊させることができるものです。細菌は黄色ブドウ球菌、カビは青カビ、ウイルスは危険性のない大腸菌ファージを使用しています。これらの微生物を空間に浮遊させることで、おもに空気清浄機の除菌の性能評価を行うことができます。通常の空気清浄機は、空気をフィルターでろ過して、粒子状の物体を物理的に無くす働きをします。それに対して、最近、各社が研究開発しているのは、フィルターを搭載しないでも、イオンで菌を殺すことができるか、というものです。私たちは、これらの性能評価も行っています。フィルターの場合は、「どのぐらいの集塵能力があるのか」ということが差別化のポイントになります。イオンの場合も同じように、どのぐらい、菌やウイルスを除去する能力があるのかを実験で評価することになります。
メーカー各社がそれぞれバラバラの環境で実験した結果を宣伝するのではなく、業界として実験方法を統一して、「この方法で試験した時は、このぐらい効果がありますよ」ということを言えるようになれば、消費者から見ればわかりやすくなります。その観点から、このたび、日本電機工業会が浮遊ウイルスを使った試験方法を定めました。その基準をつくるもとになっているのがアメニティ・テクノロジーさんで製作していただいた試験室なのです。現在、北里環境科学センターと日本食品分析センターの2カ所が第三者機関の評価機関の例としてとして存在しています。
この試験チャンバーは、今まで世の中に存在しないものをつくらなければなりませんでしたので、アメニティー・テクノロジーさん以外にお願いできるところは考えられませんでした。アメニティ・テクノロジーの永安社長が北里研究所に初めていらしたのは30年以上前だと伺っています。私(菊野部長)はもう少し後に入所したのですが、それ以来、長きにわたり、さまざまな装置をつくっていただいています。永安社長を始め、アメニティー・テクノロジーさんは、クリーンルームに関して実績と経験が豊富でとにかく引き出しが多いのです。非常に頼りにしていますよ。
差圧制御
A:統一基準で評価する第三者機関が必要でした。
この設備においては、菌やウイルスは何があっても外に出てはいけないので、常に陰圧に保たなければなりません。そのためには制御が必要です。簡単なことのように思えますが、「どんなことがあっても外に出さない」となると意外と難しいのです。まず、チャンバー内をゴミや菌がないクリーンな状態にします。その次に徐々に陰圧を保ちながら菌を噴霧します。その際、ファンで菌を撹拌したりするのですが、ちょっと風が吹いただけでも、一時的に陰圧でなくなったりもします。それでは菌が外に出てしまいますから、もっと強い力で常に陰圧を、と思いがちです。しかし、それでは機械に負担がかかりすぎてしまいます。「ちょうどいい頃合いの制御」、これが難しいのです。クリーンルームもそうですが、チャンバー内を常にクリーンに保つためのファンは大きなものです。それをオンオフさせて、決して行き過ぎないようにしながら、ある一定の状態を保つ、これはとても難しい制御技術です。
試験の自動化
A:統一基準で評価する第三者機関が必要でした。
試験を開始する時には、ボタンひとつで自動で菌をエアロゾル化して噴霧できます。非常に手間がかからないのが特徴です。試験自体はかなりたくさんの条件設定があり、大変ですから、実施過程ぐらいは自動化して簡単にしたいと考えました。どんな条件でもコントロールパネルで細かく設定できるようにプログラムするのはかなり大変でしたね。「どんな条件でどんな試験をしたいのか」というご要望を正確に理解しない限り、制御プログラムは書けません。そして理解したことを形にするためには、タッチパネル、シーケンサー、センサー、パソコンソフト、通信、空調機などの知識をすべて持ち合わせた技術者が必須になります。また、静電気対策を施し、チャンバー内にコンタミが付着しないようにしてあります。
Photo-1
クリーン試験チャンバー内部。ステンレス製でアースをとっているので、帯電しない構造です。水洗い、消毒も可能です。・・図面に戻る
Photo-2
噴霧器:コンプレッサーで圧縮空気をつくります。空気が流れてくると、水を吸い上げて霧状(エアロゾル化)にして検体を飛ばします。・・図面に戻る
Photo-3
給気口、排気口:天井には、HEPAフィルターを装着した給気口と排気口が配置されています。右側が給気、左側が排気です。どちら側に給気口を配置するかは、重要なファクターです。フィルターユニットには、菌が付着しにくい構造です。細菌が再飛散せず、なおかつ消毒しやすくなっています。また実験終了後は、前回の検体が残らないように確実にクリーンな状態に戻すことができます。・・図面に戻る
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グローブ:外側からでも試験機器の操作ができるようにグローブを設置してあります。陰圧状態の時には膨らみます。・・図面に戻る
Photo-5
ファン:このファンを止めたり動かしたりすることで、自由に試験室内の空気を撹拌することができます。時系列で、細かくオンオフ設定ができるようにプログラムされています。・・図面に戻る
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差圧ダンパー;適切な陰圧に保つためには排気した分の空気を常に取り入れなければなりません。開閉扉下部に設置されたおもりの位置を変えることで調整が可能です。差圧センサーによってファンを回転させたり停止させたりすることに加えて、差圧ダンパーを利用することで、より安定した差圧制御が可能になります。・・図面に戻る
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紫外線ランプ:試験後は、天井のHEPAフィルターで菌を回収した後、紫外線ランプで完全に殺菌します。菌の繁殖よりも消毒能力が勝るランプを慎重に選定することが重要です。・・図面に戻る
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前室:菌やウイルスを噴霧する際、万一、隙間から漏れても、外に出ていかないようにするためにこの部屋は存在しています。この部屋にもファンとフィルターが設置され、常に陰圧に保たれています。加えて、噴霧器および計測器の周辺には、クリーンブースが設置されているフェイルセーフ構造です。・・図面に戻る
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制御盤:ファン、ポンプ、噴霧器、換気ダンパーなどの試験室におけるすべてのデバイスの制御を行えるようになっています。機器異常が起きたときには、自己診断の上、その対策まで示されます。・・図面に戻る

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